離職は突然ではない。「気づけなかった」をなくす、組織健康診断とエンゲージメントパルス調査

2026.09.03 16:32 Coobase活用 ブログ AI

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「先週まで普通に働いていたのに、急に退職届を出された」 「面談では特に不満はないと言っていたのに」

管理職や経営者であれば、一度はこうした経験があるのではないでしょうか。しかし、辞めた本人の側から見ると、退職は突然ではありません。数か月前から不満や違和感が積み重なり、転職活動を進め、報告のタイミングを計っていた。そのプロセスが会社側に見えていなかっただけです。

この記事では、国内の調査データをもとに「離職の兆候はなぜ見えないのか」を整理し、CooBaseの組織健康診断とエンゲージメントパルス調査で、兆候を日常的に捉える方法をご紹介します。

1. 「突然の退職」は、会社側にだけ突然に見えている

退職を決めてから報告するまで、1〜3か月の空白がある

エン・ジャパンが2024年に3,780名を対象に実施した「退職の報告」に関する調査では、退職を決意してから実際に上司へ報告するまでの期間は、すべての年代で「1か月〜3か月未満」が最多でした。

つまり、本人の中で退職が決定事項になってから、会社がそれを知るまでに、少なくとも1か月以上の時間が流れています。この期間、本人は転職活動を進め、引き継ぎの段取りを考え、「いつ伝えるか」を悩んでいます。同じ調査で、今後退職を報告する際に不安なことの最多は「退職をいつ伝えるか」(36%)でした。

会社側にとっては、この1〜3か月こそが「まだ手を打てた期間」です。しかし、本人は表面上いつも通り働いているため、注意していなければ変化に気づけません。

4割以上が「本当の退職理由」を伝えていない

さらに厄介なのは、報告を受けた時点でも、本当の理由は聞けていないことが多いという事実です。

同調査では、退職報告の際に本当の理由を「伝えなかった」と回答した人が44%にのぼりました。会社に伝えた理由の1位は「新しい職種にチャレンジしたいため」(31%)ですが、伝えなかった本当の理由の1位は「職場の人間関係が悪いため」(38%)です。前向きな理由として語られた退職の裏に、職場環境への不満が隠れています。

なぜ本当の理由を伝えないのか。エン・ジャパンが2022年に10,432名を対象に行った調査では、その理由の上位は次の通りでした。

本当の理由を伝えなかった理由割合
円満退社したかったから43%
話しても理解してもらえないと思ったから36%
言う必要がないと思ったから27%
建設的な話し合いにならないと思ったから23%

「話しても理解してもらえない」「建設的な話し合いにならない」という回答は、退職を決めるずっと前から、職場に本音を言える土壌がなかったことを示しています。退職面談で本音を聞き出そうとしても遅いのです。

離職は減っているが、なくなってはいない

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、2024年の離職率は14.2%(前年比1.2ポイント低下)、一般労働者に限ると11.5%でした。低下傾向とはいえ、100人の会社であれば年間10人以上が入れ替わる計算です。

人手不足が続く中で、1人の欠員は採用費だけでなく、残ったメンバーの負荷増、ノウハウの流出、引き継ぎ期間の生産性低下という形で組織に跳ね返ります。中小企業ほど、1人の離職が事業に与える影響は大きくなります。

2. なぜ兆候に気づけないのか

定期的なサーベイを行っている企業は半数以下

カオナビ タレントインテリジェンス総研が2025年3月に人事・労務担当者1,000名を対象に行った調査では、従業員のエンゲージメントや満足度を測るサーベイを「定期的に実施している」企業は47%(全社的に実施24.3%、一部部署で実施22.7%)でした。「定期的な実施はない」は37.9%で、企業規模が小さいほど実施率は低下する傾向が示されています。

さらに、実施している企業でも頻度は「年1回程度」以上が7〜8割を占め、年1回が標準になっています。しかし、退職の決意から報告までが1〜3か月であることを考えると、年1回の調査では、兆候が現れてから次の調査までに退職が完了してしまいます。

「1on1で聞けばわかる」は成り立たない

多くの企業では、離職防止を上司との面談に頼っています。しかし前述の通り、退職を決めた人の4割以上は、報告の場でも本当の理由を口にしません。ましてや、まだ迷っている段階で「最近どうですか」と聞かれて、上司本人への不信感や人間関係の悩みを正直に話す人は多くありません。

面談は重要ですが、面談だけでは「言いにくいこと」は拾えません。言いにくいことを安全に伝えられる別の経路と、本人が言葉にしなくても変化が見える仕組みの両方が必要です。

中小企業で起きやすい3つの構造的問題

  1. 観察が属人化している:メンバーの変化に気づけるかどうかが、上司個人の感度に依存している
  2. 記録が残らない:「最近元気がない気がする」という感覚が、共有も蓄積もされないまま流れていく
  3. 本音を言う経路がない:不満を伝える先が直属の上司しかなく、上司自身が原因の場合は行き場がない

3. CooBaseの2層アプローチ:毎日の変化と、定期的な本音

CooBaseでは、離職の兆候を「日常の変化」と「本音の把握」という2つの層で捉えます。

第1層:組織健康診断(毎日の変化を見る)

CooBaseの日報には、その日の気分を5段階で記録する感情スコアがあります。ワンタップで記録できるため、メンバーの負担はほとんどありません。この毎日の記録が、組織健康診断の土台になります。

部署別のヒートマップ 部署ごと、週ごとの平均感情スコアがヒートマップで表示されます。「営業部が3週連続で下がっている」「先月の組織変更以降、開発チームの数値が落ちた」といった変化が、一目でわかります。

ネガティブ傾向の自動検知 感情スコアが低い状態が続いたり、日報の文章に「疲れた」「限界」といった表現が繰り返し現れたりすると、CooBaseがネガティブ傾向として検知します。同じメンバーが3日以上連続でネガティブな状態にある場合は、管理者にアラートが表示されます。AIが日報の内容から、ネガティブの背景にある原因の傾向(業務量、人間関係、体調など)を分析するため、声をかける際の手がかりになります。

離職リスクの可視化 日報の傾向や月次の評価データをもとに、メンバーごとの離職リスクが「高」「中」の段階で表示されます。数値そのものが結論ではなく、「今週中に一度話をする」「業務量を確認する」といった行動を起こすためのきっかけとして設計されています。

毎朝の組織異常検知 経営層・管理者向けに、組織全体の状態に異常な変化がないかを毎朝通知します。ダッシュボードを開く習慣がなくても、「今日注意すべきこと」が届きます。

第2層:エンゲージメントパルス調査(本音を安全に集める)

日報は本人の名前で記録されるため、「上司に不信感がある」といった内容は書きにくいものです。そこで、CooBaseは匿名のパルス調査を組み合わせます。

4項目+自由記述、回答は1〜2分 質問は次の4つに絞られています。

項目尺度何を測るか
マネージャーへの信頼5段階上司との関係が退職理由になりやすいことを踏まえた直接指標
心理的安全性5段階「言いにくいことを言える職場か」
成長実感5段階停滞感が転職動機に変わる前に把握
eNPS0〜10「この会社を友人に勧められるか」による総合的なロイヤルティ

これに任意の自由記述が加わります。回答負担が小さいため、年1回ではなく月1回や四半期ごとの高頻度で実施でき、退職の決意から報告までの「1〜3か月」の中で変化を捉えられます。

匿名性の担保 回答は個人と紐づけずに保存され、経営層や管理者が見られるのは全社およびグループ単位の集計結果のみです。誰が何と答えたかは、システム上も特定できない設計です。また、回答者が少ないグループでは個人が推測されないよう、結果の表示に配慮しています。

グループ別の比較 全社平均だけでなく、部署やチームごとの4指標を比較できます。「全社では問題ないが、特定のチームだけマネージャー信頼が低い」といった局所的な問題が浮かび上がります。

2層を組み合わせる意味

観点組織健康診断(日報ベース)パルス調査(匿名)
頻度毎日月次〜四半期
粒度個人までグループ単位
得意なこと変化のタイミングを捉える言いにくい本音を集める
苦手なこと上司への不満は表れにくい個人の特定はできない(意図的に)

日報で「営業部の数値が下がっている」ことがわかり、パルス調査で「営業部だけマネージャー信頼が低い」ことがわかれば、打つべき手は明確になります。逆に、日報の数値が下がっているのにパルス調査の結果は良好であれば、問題は人間関係ではなく業務量や繁忙期の影響と推測できます。

今後の予定

集計結果のトレンドから、AIが改善の示唆を生成する機能を計画しています。「成長実感が3期連続で低下しているグループには、目標設定の見直しを検討してはどうか」といった提案を、データとともに提示する構想です。

4. 運用のすすめ:数値を「行動」に変える3つのルール

仕組みを入れるだけでは、離職は減りません。数値を見て動くルールを決めておくことが重要です。

ルール1:アラートには48時間以内に「声をかける」

連続ネガティブや離職リスクのアラートが出たら、48時間以内に本人と短時間でも話す時間を作ります。目的は「問い詰める」ことではなく、「見ている」と伝えることです。エン・ジャパンの調査で「話しても理解してもらえない」と考えた人が36%いたことを思い出してください。関心を持って声をかけること自体が、その前提を崩します。

ルール2:パルス調査の結果は、必ず全員にフィードバックする

調査結果を経営層だけで抱え込むと、回答者は「答えても何も変わらない」と感じ、回答率が下がっていきます。集計結果と「それを受けて何をするか」をセットで社内に共有することが、次回の回答率と本音の量を決めます。

ルール3:グループの数値が下がったら、上司ではなく「上司の上司」が動く

マネージャー信頼のスコアが低いグループで、当のマネージャーに対応を任せるのは構造的に無理があります。グループ単位の数値悪化は、一つ上の階層か人事が対応する、と事前に決めておきます。

想定される活用シーン

状況CooBaseで見えること取るべき行動
特定メンバーの感情スコアが週単位で下がっている個人の日報トレンド、ネガティブ原因の傾向1on1で業務量や体調を確認
部署全体のヒートマップが悪化部署別の週次推移繁忙期か、体制変更の影響かを切り分けて対策
パルス調査でマネージャー信頼だけ低いグループがあるグループ別4指標の比較上位管理者・人事によるヒアリング
eNPSが全社的に低下四半期ごとの推移経営方針や評価制度の説明機会を設ける
新入社員の成長実感が低い入社期別の比較オンボーディング計画と育成担当の見直し

まとめ

退職は、本人にとっては1〜3か月をかけた決断であり、その理由の4割以上は会社に伝えられません。会社側が「突然だった」と感じるのは、その期間の変化を見る仕組みと、本音を安全に伝えられる経路がなかったからです。

CooBaseの組織健康診断は、日報の感情スコアから毎日の変化を捉え、エンゲージメントパルス調査は、匿名で本音を集めます。この2層を組み合わせることで、「言葉にならない変化」と「言葉にしにくい本音」の両方が、退職届が出る前に見えるようになります。

離職を完全にゼロにすることはできません。しかし、「気づいていれば防げた離職」をなくすことはできます。そのための第一歩は、毎日の小さな記録を積み重ねることから始まります。

参考文献