「来月末で退職させてください」
そう告げられたとき、多くのマネージャーが口にするのは「全然気づかなかった」という言葉です。日報は毎日出ていた。タスクも遅れていなかった。先月の1on1でも特に不満は聞かなかった。それなのに、いつの間にか本人の中では退職が決まっていた。
こうした「突然の退職」は、実は突然ではありません。本人の中では数ヶ月前から兆候が出ていて、周囲に見えていなかっただけです。本記事では、日本国内の調査データからこの構造を整理し、CooBaseのスタッフ分析機能がどのようにマネージャーの「見えなかった」を減らすのかを解説します。

産業能率大学 総合研究所が上場企業の課長828人を対象に実施した「第6回上場企業の課長に関する実態調査」(2021年)によると、プレイヤーとしての役割が全くない課長はわずか0.5%。99.5%の課長がプレイヤーとマネジャーを兼務しています。加重平均で見ると、課長の業務の50.1%がプレイヤーとしての仕事です。
さらに、プレイヤーとしての役割を持つ課長の約半数が「プレイヤーとしての活動がマネジメント業務に支障がある」と回答しています。
つまり、部下を観察する時間が構造的に足りていない。これは個々のマネージャーの意識や能力の問題ではなく、日本企業のミドルマネジメントが置かれた前提条件です。
エン・ジャパンが運営する『エン転職』のユーザー3,780名を対象にした「退職の報告」に関する調査(2024年)では、転職経験者の44%が退職報告の際に「本当の理由を伝えなかった」と回答しています。伝えなかった理由の最多は「円満退社したかったから」(46%)でした。
会社に伝えた退職理由の1位は「新しい職種にチャレンジしたいため」(31%)ですが、伝えなかった本当の理由の1位は「職場の人間関係が悪いため」(38%)。表向きの理由と本音は大きくずれています。
注目すべきは、退職を決意してから実際に報告するまでの期間です。すべての年代で「1ヶ月〜3ヶ月未満」が最多でした。本人が心を決めてから上司が知るまでに、1〜3ヶ月の空白があるということです。この期間、本人は「円満に辞めたい」と考えているため、面談で不満を語ることはまずありません。
パーソル総合研究所が2025年2月に発表した「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(正社員3,000名対象)によると、直近半年で1on1を経験した部下は55.7%。一方で、上司・部下ともに3人に1人が「面談の効果が感じられない」と回答しています。
上司が困っていることの上位は「面談について学ぶ仕組みがない」(35.4%)と「上司が多忙で、面談のスケジュール設定が難しい」(35.3%)。部下側でも「面談の効果が感じられない」が1位(29.7%)でした。同調査では、1on1の実施頻度は平均でひと月あたり0.8回。会社の方針・義務で実施している場合は0.5回とさらに少なくなっています。
1on1の場を設けても、何を話せばいいのか分からない。準備する時間もない。結果として「最近どう?」「特に問題ないです」で終わる面談が繰り返される。これでは、本音を隠している部下の変化には気づけません。
これらの調査をつなげると、問題の構造が見えてきます。
つまり、必要なのは「もっと部下を見ろ」という精神論ではありません。限られた時間で、本人が口にしないサインを拾い、面談で何を話すべきかを事前に把握できる仕組みです。

CooBaseのスタッフ分析は、日報、タスク、スキル、目標、称賛、勤怠など、日々の業務でCooBaseに蓄積されるデータを一人ひとりのスタッフ単位で統合し、マネージャーが多角的に状態を把握するための分析画面です。管理者・サブ管理者・グループマネージャーが利用でき、グループマネージャーは自分が担当するグループのメンバーのみを閲覧します。

スタッフ一覧では、担当するメンバーがカード形式で並び、各カードに総合グレード、総合スコア、離職リスクのレベル、そして5つの評価軸のバランスを示す小さなレーダーチャートが表示されます。画面上部には高・中・低のリスク別人数がまとめて表示されるため、「今朝、誰を気にかけるべきか」が一目で分かります。
グループやリスクレベルで絞り込んだり、グレード順・スコア順・リスク順で並び替えたりできるので、朝のわずかな時間で「今週フォローすべき人」を特定できます。
スタッフ分析の中核が、月次の評価データから離職リスクを自動で判定する仕組みです。判定には主に3つの要素を使います。
これらを組み合わせてリスクを高・中・低の3段階に分類し、高リスクのスタッフには赤いバッジ、中リスクには黄色い「要注意」バッジが表示されます。低リスクの場合は何も表示されないため、通常のマネジメントに集中できます。
ポイントは、本人の申告に頼らないことです。日報の文面から日々の感情を継続的に読み取り、その推移から変化を捉えるため、「円満に辞めたい」と考えて不満を隠している段階でも、データ上には変化が現れやすくなります。エン・ジャパンの調査が示した「決意から報告までの1〜3ヶ月」を、対応可能な時間に変えるための機能です。
離職リスクとは別に、日々の行動データから「今すぐ確認すべき状況」を自動で検出し、詳細画面の最上部に表示します。代表的なアラートは次のとおりです。

| アラート | 検出条件の例 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 感情スコア急落 | 数日連続で感情スコアが低い、または前週から大きく下がった | すぐに声かけ、1on1の設定 |
| 過重労働 | 月間の残業時間が一定の水準を超えた | 業務量の調整、タスク再配分 |
| 連続マイナス評価 | 直近の評価がすべてマイナス | 改善点の具体的なフィードバック |
| 日報未提出 | 直近の営業日で未提出が続いている | 提出を促す、困っていないか確認 |
| 目標進捗遅れ | 期限が迫っているのに進捗が遅い | 目標の見直し、サポート提供 |
アラートは緊急度に応じて色分けされ、赤は最優先で対応、黄は今週中に検討、青は次回の1on1で話題にする、という目安で運用できます。
パーソル総合研究所の調査で明らかになった「何を話せばいいか分からない」「準備する時間がない」という課題に対して、スタッフ分析はAIが毎朝自動で分析レポートを生成します。

レポートには次の内容が含まれます。
マネージャーは面談前にこのレポートを読むだけで、「最近どう?」ではなく「先週から日報の感情スコアが下がっているけれど、案件Aで何か詰まっていない?」という具体的な問いかけから会話を始められます。同調査では、部下の話す割合が高く、部下が話すテーマを決めているほど成長度が高いことも示されています。具体的な論点を事前に把握しておくことは、部下に話してもらうための土台になります。

スタッフの評価は、生産性・成長・責任感・チーム貢献・ウェルビーイングの5つの軸でレーダーチャートに表示されます。成果や生産性だけを見ていると、頑張りすぎて疲弊している人と、余裕を持って成果を出している人の区別がつきません。5軸で見ることで、「生産性は高いがウェルビーイングが落ちている」といったアンバランスに気づけます。
過去数ヶ月の推移も確認できるため、評価面談では「この3ヶ月でチーム貢献の評価が伸びている」といった変化を根拠を持って伝えられます。
リスクの検出だけではなく、評価されにくい貢献を拾い上げるのもスタッフ分析の役割です。
「見えない努力」セクションでは、日報の連続提出日数、工数見積もりの精度、学習の継続日数、バッジの獲得数を表示します。「ポジティブ・インフルエンス」セクションでは、Kudos(称賛)の送受信数、投稿したナレッジの閲覧数、議事録への参加などのコラボレーション件数を確認できます。
Kudosを多く送っている人はチームに貢献している人であり、ナレッジの閲覧数が多い人は有益な情報を発信している人です。こうした指標は、1on1で具体的に褒める材料になるだけでなく、次のリーダー候補を見つける手がかりにもなります。

詳細画面は次の7つのタブで構成されており、概要で気になった点を深掘りできます。
| タブ | 確認できること |
|---|---|
| 概要 | アラート、5次元評価、AIサマリー、KPI、感情推移、日報提出状況など全体像 |
| スキル | スキルのバランス、成長の推移、レベルとポイント、変更履歴 |
| 日報 | 感情スコアの推移、曜日別の傾向、直近の日報一覧 |
| 工数 | 見積もりと実績の精度、プロジェクト別の作業時間、タスク完了数の推移 |
| 学習 | 総学習時間、学習日数、進行中コンテンツの進捗 |
| 目標 | 個人目標の進捗、作成・編集、AIによる目標案の提案 |
| 勤務 | 総労働時間、残業時間、出勤日数、勤務パターン(勤怠機能を利用している場合) |
分析対象の期間は30日・90日・180日・1年で切り替えられます。直近の変化を見たいときは30日、評価面談の準備には180日や1年といった使い分けが可能です。
データによる自動分析に加えて、マネージャー自身が観察した行動を記録できます。プラス評価・マイナス評価を選び、勤務態度・チームワーク・主体性・コミュニケーションなどのカテゴリと具体的な内容、観察日を記録します。同じスタッフに対する評価は評価者に関わらずすべて表示されるため、複数のマネージャーが関わる場合でも情報が分散しません。
リスクのあるスタッフに対しては、1on1面談・業務量調整・研修やサポート・経過観察といった対応の種類と実施日を「対応記録」として残せます。「アラートは出たが、誰も何もしていなかった」という状態を防ぎ、チームとして対応の履歴を共有できます。
スタッフ分析を活かすために、次のような運用リズムをおすすめします。
毎朝1分:一覧画面でアラートとリスクバッジを確認する 今日声をかけるべき人が誰かを把握します。赤いアラートが出ていれば、その日のうちに一言でも声をかけます。
週1回5分:感情スコアの推移を見る チーム全体の感情の動きを確認し、下降傾向のメンバーがいれば来週の1on1を前倒しします。
月1回15分:AIサマリーと5次元推移で1on1を準備する 面談の直前にAIが提案する1on1トピックを読み、推奨アクションをもとに自分の言葉で問いかけを用意します。面談後は手動評価や対応記録を残します。
| シーン | 使う機能 |
|---|---|
| 1on1の準備 | マネジメントアラート → AIサマリー → 1on1トピック → 評価タイムライン |
| 評価面談の準備 | 5次元レーダー → 5次元スコア推移 → 見えない努力 → 手動評価一覧 |
| 離職の兆候チェック | リスクサマリー → 感情スコア推移 → 日報提出状況 → 対応記録 |
| 次のリーダー候補探し | ポジティブ・インフルエンス → スキルタブ → 目標タブ |
課長の99.5%がプレイングマネジャーで、退職者の44%は本音を伝えず、1on1は3人に1人が効果を実感できていない。この3つのデータが示すのは、部下の変化に気づけないのはマネージャー個人の落ち度ではなく、構造的に「見える仕組み」がなかったということです。
CooBaseのスタッフ分析は、日々の業務データから本人が口にしないサインを自動で拾い、リスクとアラートで知らせ、AIが面談の論点まで用意します。マネージャーがやるべきことは、毎朝1分だけ画面を見て、気になった人に声をかけること。それだけで、「決意から報告までの1〜3ヶ月」は、手遅れになる前に手を打てる時間に変わります。