「助かったよ、ありがとう」
このひと言は、おそらく今日もあなたの会社のどこかで交わされています。廊下で、チャットで、朝礼の後で。
ただ、その言葉は数時間後には消えています。誰も記録していないからです。そして半年後の評価面談で、上司は「今期は何をしてくれたんだったかな」と手元の資料をめくることになります。
感謝や称賛は、組織の中でもっとも頻繁に発生していて、もっとも記録されていない情報です。この記事では、なぜそれが組織にとって損失なのかを国内の調査データから確認したうえで、CooBase の「Kudos(称賛)」機能とバッジ・成長ログが、その損失をどう埋めるのかをご紹介します。
マイナビキャリアリサーチLab が 2025年9月に実施した「"感謝"の重要性」に関する調査(全国の20代〜50代の正規・非正規雇用者 1,600名)に、この関係を示す数字があります。
職場への満足度について、「感謝されている」と答えた人のうち満足していると回答したのは 48.8%。一方「感謝されていない」人では、その割合が 25.2ポイント低くなりました。
働くモチベーションの高さでも同様で、感謝されている人(29.5%)は、感謝されていない人(12.9%)を 16.6ポイント上回っています。
25ポイント、16ポイントという差は、福利厚生の見直しや制度改定で動かそうとすればかなりの投資が必要な水準です。それが「感謝が届いているかどうか」だけで生じている。ここに手つかずの余地があります。
同じ調査で、働くうえで「感謝される」機会があると答えた人は 76.8% でした。一見すると高い数字です。
しかし内訳を見ると、「ほぼ毎日ある」はわずか 9.8%。「よくある」の 21.1% を足しても3割程度で、最多は「時々ある」の 45.9% でした。
つまり大半の人にとって、感謝されるのは「たまに起こる出来事」です。日常ではありません。
さらに、この調査では「感謝する機会がある人」と「感謝される機会がある人」の相関係数が 0.7041 と、強い相関が確認されています。感謝は一方通行では成立せず、送る人のところに返ってくる。逆に言えば、送る習慣が組織にないと、受け取る機会も生まれないということです。
この調査でもう一つ興味深いのは、モチベーションが上がる感謝の言葉を自由回答から分類した結果です。
出てきた言葉は「ありがとう」だけではありませんでした。「助かった」「おかげで」といった表現に加えて、「頑張っているね」「よくやった」のような称賛や労いの言葉も多く挙がっています。
そして感謝の対象は、次の4タイプに整理されました。
調査ではこれを、「頼られているという実感」と「見てくれているという実感」の二つが、モチベーションにつながる鍵だと分析しています。
ここが実務上とても重要です。同じ「ありがとう」でも、何に対する感謝なのかが伝わったときにはじめて効く。漠然とした「お疲れさま」では、この実感は生まれません。

「貢献はちゃんと評価で見ている」という反論があるかもしれません。しかし、その評価自体が信頼されていないというデータがあります。
ワークポートが 2024年10月に全国の20代〜40代のビジネスパーソン 455名に実施した「人事評価」に関する満足度調査では、次の結果が出ました。
不満の理由として挙がったのは、上司に気に入られた人が評価される、何を評価されているのか分からない、といった公平性・透明性への疑問でした。
評価制度そのものが悪いわけではありません。問題は、半年に一度の評価と、日々の行動をつなぐ記録がないことです。
上司の記憶に残っているのは、直近の数週間と、目立った成功・失敗だけ。地味に周囲を支え続けた人、新人の質問に毎回丁寧に答えていた人、体調を崩したメンバーの分をそっと引き受けた人。こうした貢献は、評価シートの記入欄までたどり着きません。
エン・ジャパンが 2024年10月〜11月に転職経験者 3,780名へ実施した「退職の報告」に関する調査では、44% が退職時に本当の理由を「伝えなかった」と回答しています。
伝えなかった本当の退職理由の第1位は「職場の人間関係が悪いため」で 38%。一方、実際に会社へ伝えた退職理由の第1位は「新しい職種にチャレンジしたいため」(31%)でした。ちなみにこの理由、本当の退職理由としては第9位(10%)にとどまります。
会社が退職面談で受け取っているのは、多くの場合きれいに整えられた建前です。本当の理由は、辞める前の数か月間、日々の職場のやりとりの中に現れていたはずですが、記録がなければ後から振り返ることもできません。
CooBase の Kudos は、メンバー同士がカテゴリを選んで感謝や称賛を送り合う機能です。全ログインユーザーが利用でき、送る側にも受け取る側にも権限の制限はありません。
Kudos を送るときは、必ずカテゴリを1つ選びます。
| カテゴリ | どんなときに送るか |
|---|---|
| チャレンジ精神 | 新しいことに挑戦した、困難を乗り越えた |
| チームワーク | チームに貢献した、協力してくれた |
| 顧客志向 | お客様のために尽力した |
| 専門性 | 専門知識やスキルを発揮した |
| サポート力 | 周囲をサポートしてくれた |
| ウェルネス推進 | 健康的な働き方を実践・推進した |
| ポジティブ影響 | チームの雰囲気を明るくした |
先ほどのマイナビ調査で整理された「仕事貢献」「存在」「支援」「頑張り」の4タイプと重ねてみてください。専門性や顧客志向は仕事貢献に、サポート力は支援に、ポジティブ影響やウェルネス推進は存在への感謝にあたります。
カテゴリを選ぶという一手間が、「ありがとう」を「何を見て、何に感謝したのか」に変換します。これが「見てくれている」という実感を生みます。
任意でメッセージも添えられるので、具体的な場面を一行残すこともできます。
称賛の仕組みが形骸化する最大の理由は、「わざわざ専用画面を開かないといけない」ことです。CooBase では、送信の入り口を業務動線上の複数箇所に用意しています。
送られた側には通知が届きます(通知設定でオフにすることも可能です)。
ダッシュボードの Kudos ウィジェットには、今月受け取った件数だけでなく、自分が送った件数とカテゴリ別の内訳、直近のメッセージが表示されます。
受け取った数だけを見せる設計にしなかったのは意図的です。マイナビ調査が示したとおり、感謝は送る人のところに返ってきます。「今月、自分は誰かにきちんと感謝を伝えられたか」を自分で振り返れることが、循環の起点になります。
なお、同じ相手に何度でも送れます。月に1回といった制限はありません。感謝は希少資源ではないからです。

Kudos が「点」だとすれば、バッジと成長ログはそれを「線」にする仕組みです。
CooBase の「マイ成長」画面では、次の情報をタブで切り替えて確認できます。
サマリー 総ポイント、平均スキルレベル、獲得バッジ数、保有スキル数を月別の比較グラフとともに表示します。
スキル スキルごとのポイントを一覧とレーダーチャートで可視化します。表示するスキルは最大12件まで選べるので、いま伸ばしたい領域だけに絞って見ることもできます。
バッジ 獲得済み・未獲得を切り替えて表示でき、取得順やレア度で並べ替えられます。「未獲得」を眺めることで、次に何を目指すかが見えるようになっています。
成長ログ 日報の提出、タスク完了、バッジ獲得、スキルのレベルアップといった出来事が、時系列で自動的に記録されます。期間と種別で絞り込めるので、「この3か月で自分に何が起きたか」を数分で振り返れます。
ポイント獲得履歴 何をしてポイントが増えたのかを、月別・種別のフィルタ付きで一件ずつ確認できます。総合スコアだけを見せて中身をブラックボックスにしない、という考え方です。
学習・評価 学習プランの進捗や、評価スコアの推移・自己評価とのギャップも同じ画面で確認できます。
半年前の自分が何をしていたかを思い出せる人は多くありません。しかし、成長ログに「3月:新人メンバーのサポートでサポート力の Kudos を5件受領」「4月:フロントエンドのスキルがレベル3に到達」と残っていれば、評価面談も1on1も、記憶をたどる会話ではなく事実にもとづく会話になります。

Kudos を単なる社内コミュニケーション施策で終わらせないために、CooBase では称賛のデータを評価と分析につないでいます。
CooBase の評価シートは、業種別テンプレートから選んで自社用に編集できます。そのうち「かんたん3項目テンプレ」は、数字での管理に慣れていない組織向けの最小構成で、次の3つで構成されています。
いずれも自動集計される指標なので、評価者が数字を集める作業は発生しません。「貢献」という、これまで評価者の印象に頼るしかなかった項目に、日々積み上がった客観的な記録が入ります。
先ほどのワークポート調査で挙がっていた「何を評価されているのか分からない」という不満に対して、少なくとも「周囲からどう見られていたか」は説明可能なデータになります。
管理者向けのスタッフ分析画面には、「ポジティブ・インフルエンス」というセクションがあります。ここに Kudos の送受信数が、ナレッジの閲覧数やコラボレーション件数と並べて表示されます。
隣接する「見えない努力」セクションには、日報の継続日数、工数入力の精度、学習の継続、バッジ獲得が並びます。
数字の成果には現れないけれど、チームを支えている人。この2つのセクションは、そういうメンバーを見つけるためのものです。AI が生成する分析サマリーや 1on1 のトピック提案にも、これらの傾向が反映されます。
称賛の仕組みは、入れれば動くというものではありません。導入企業の様子を見ていて、うまくいく組織に共通する点をまとめます。
1. まず経営層と管理職から送る
現場から自然発生的に始まることはほとんどありません。最初の2週間、管理職が意識的に送る。それだけで「ここでは感謝を言葉にしていい」という空気ができます。マイナビ調査でも、モチベーションが上がるのは「上司」(53.5%)に感謝されたときが最多でした。上から送ることには効果があります。
2. 件数のノルマにしない
「月5件送ること」と決めた瞬間に、中身のない Kudos が量産されます。ダッシュボードで送信数が見えるのは、本人が自分で振り返るためであって、管理するためではありません。
3. カテゴリの偏りを1on1のネタにする
ある人に「サポート力」ばかり集まっているなら、その人はチームの縁の下を支えています。それが本人の望むキャリアと一致しているかは、聞いてみないと分かりません。「専門性」が一度も来ていないなら、力を発揮できる場が与えられていない可能性もあります。データは会話のきっかけとして使うのが一番効果的です。
4. 評価への反映は、比重を抑えて始める
Kudos 受信数を評価指標に組み込めますが、いきなり大きな比重を置くと、相互に送り合って数を稼ぐ動きが出かねません。まずは補助的な指標として置き、称賛が自然に流れる状態を作ってから比重を検討することをおすすめします。
「ありがとう」を言葉にして伝えている職場は、実は多くありません。日常的に感謝される人は10人に1人。それでも、感謝が届いている人と届いていない人では、職場満足度に25ポイント、モチベーションに16ポイントの差が出ています。
一方で、半年に一度の評価だけでは日々の貢献は拾いきれず、7割近くの人が人事評価に不満を持ち、8割近くが評価によってモチベーションを下げた経験を持っています。そして辞める人の本当の理由は、面談では語られません。
CooBase の Kudos とバッジ・成長ログは、この隙間を埋めるための機能です。
感謝を制度にすることに抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし記録に残らない感謝は、翌週には存在しなかったことと同じになってしまいます。
まずはあなた自身が、今日誰か一人に Kudos を送ってみてください。