会議が終わる。誰かが議事録をまとめる。共有フォルダにアップする。そこで、話は終わってしまう。
三か月後、「あの件、結局どう決まったんでしたっけ」という会話が、また同じ会議室で始まる。記録は確かに残っているのに、誰も開かない。開いても目的の一行にたどり着けない。だから結局、覚えていそうな人に聞く。
これは「議事録の書き方が悪い」問題ではありません。書いたものを取り出す仕組みがないという、構造の問題です。この記事では、国内調査のデータから議事録が読まれない理由を三つに分解し、CooBaseの議事録機能とナレッジ機能でそれをどう解くかを整理します。
キヤノンマーケティングジャパンが2022年12月に実施した調査(全国の20〜59歳のビジネスパーソン1,000名、うち直近1年以内に議事録作成経験のある735名を母数)によると、議事録・発言録の作成にかける時間は1週間あたり平均6.13時間。年間に換算すると約319.6時間にのぼります。20代に限れば週8.46時間で、若手ほど作成業務を担っている実態も示されました。
負担感も明確です。作成業務に負担を感じている人は67.2%。さらに個別項目を見ると、「作成業務の負担が大きい」68.8%、「作成業務が残業につながる」62.3%、「作成業務を担当すると発言機会を損なう」62.2%、「通常業務に支障が出る」60%という数字が並びます。
一方で、「議事録の作成は必要である」「エビデンスとして有効である」と答えた人はいずれも7割超。**必要だと分かっているし、時間もかけている。それなのに読まれない。**この落差が、議事録という業務の一番つらいところです。
年間320時間は、一人あたり約40営業日分に相当します。それだけの時間を投じた成果物が、保存された瞬間に死蔵されている。これは記録の問題ではなく、投資回収の問題です。
読まれない議事録の代わりに何が起きているか。人に聞く、が起きています。
Helpfeelが2022年9月に実施した企業内検索の実態調査(従業員2,000人以上の企業に勤める正社員400名、実査は楽天インサイト)では、社内情報を調べている時間は1日あたり平均1時間5分。そして、調べてほしい情報が見つかり自己解決できていると答えた人は約22%にとどまり、残りの約77%は自己解決できていないという結果でした。
見つからなかったとき、どうするか。70.8%が「上司や同僚に問い合わせる」、59.8%が「関連部署に問い合わせる」と回答しています。つまり、自分が情報にたどり着けなかった分のコストが、そのまま周囲の時間として転嫁されている。同調査は、この構造が会社全体の生産性を下げている可能性を指摘しています。
さらに、社内情報が見つけにくい・整備されていないことでストレスを感じている社員は69.9%、それが原因でトラブルに発展した経験がある、または聞いたことがあると答えた社員は36.8%。リモートワークを行う社員の約54%は「以前より社内情報が見つけにくくなった」と回答しました。
プレイングマネージャーにとって、これは他人事ではありません。**「あの件どうなりましたっけ」という質問の受け皿になっているのは、たいていマネージャー本人です。**部下の検索が失敗するたびに、自分の時間が削られていく。
三つめは、会議そのものの生産性です。
パーソル総合研究所と立教大学・中原淳教授による長時間労働の実態調査をもとにした試算では、従業員1万人規模の企業における無駄な社内会議時間は年間約67万時間、人件費換算での損失額は年間約15億円。1,500人規模の企業でも年間9万2千時間、約2億円と算出されています。
同調査では、従業員が「無駄な会議」だと強く感じる場面として、会議が終わっても何も決まっていない、終了時刻が延びる、些細な議題で会議を開く、といった要因が挙げられています。
そしてもう一つ。過去の決定事項を参照できないと、同じ議題が何度も上がってきます。「前にも議論した気がするが、結論を思い出せない」から、ゼロベースで議論をやり直す。前回の検討で潰した選択肢を、また検討する。議事録が引き出せないことは、会議の回数そのものを増やしているのです。

ここまでの三つの問題には、共通の前提があります。それは、議事録は誰かが読みに行くものという前提です。
この前提が成り立つには、いくつもの条件が必要です。どこに保存されているかを知っていること。ファイル名から中身が推測できること。開いてスクロールして目的の記述を見つけられること。そもそもその会議が存在したことを知っていること。条件が一つでも欠ければ、検索は失敗します。
CooBaseが取っているアプローチは、この前提を裏返すことです。読みに行かせるのではなく、質問すれば議事録の側から答えが出てくる状態をつくる。
「先月の営業定例で、値引き基準について決まったことは?」と入力すれば、AIが蓄積された議事録の中から関連する箇所を探し、要約して返す。参照元の議事録へのリンクも一緒に表示されるので、原文の確認もその場でできます。ファイルの場所も、会議の日付も、覚えている必要はありません。
これを支えているのが、キーワードの一致ではなく意味の近さで探すベクトル検索の仕組み(RAG)です。「値引き基準」と書かれていなくても、「割引のルール」「特別価格の承認フロー」といった表現の議事録を拾ってきます。「たしかこう書いてあったはず」という記憶違いに強い、というのが実務上いちばん効く特徴です。

「聞けば答える」状態にするには、まず議事録が蓄積されていなければなりません。作成の負担が重いままでは、そもそも記録が残りません。
CooBaseの議事録機能では、入力の各段階に負担軽減の仕組みを組み込んでいます。
音声入力とAI清書 本文欄はマイクボタンから音声で入力できます。会議中に話しながらメモを取る、あるいは会議直後に思い出しながら口述する。そのあと「AI清書」ボタンを押せば、話し言葉の断片が読める文章に整形されます。先ほどの調査で「会議をしながらの作成が理想」という回答が77.4%だったことを踏まえれば、これは現場の希望にかなり近い形です。
AIサマリーの自動生成 本文からAIが要約を自動生成します。一覧画面ではこの要約が表示されるため、開かなくても内容の見当がつきます。「全部読む」か「開かない」かの二択だった状況に、中間の選択肢ができます。
決定事項とアクションアイテムの構造化 本文とは別に、決定事項とアクションアイテム(タスク・担当者・期限)を独立した項目として記録します。ここが構造化されていることが後の検索精度に効きますし、何より「何が決まって、誰がいつまでに何をやるのか」が本文の中に埋もれません。
タグと添付ファイル タグは使用頻度の高いものが上位にサジェストされます。添付したPDFやテキストファイルは中身のテキストが抽出され、これも後のAI検索の対象に含まれます。会議で配った資料の中身まで検索できる、ということです。
議事録一覧の「AIに質問」から、蓄積された議事録全体に対して自然文で質問できます。
回答には参照した議事録へのリンクと、その議事録がどの程度質問に関連しているかを示す類似度が表示されます。AIの回答をそのまま鵜呑みにするのではなく、必ず原文に戻れる導線が確保されている、という設計です。議事録は意思決定の記録である以上、「AIがそう言った」で止まっては困るからです。
検索範囲は次の軸で絞り込めます。
質問のコツは具体的に聞くことです。「営業について」より「先月の営業定例で新規顧客の与信ルールについて決まったことは?」のほうが精度が上がります。期間やグループを絞ると、さらに安定します。
プロジェクト管理機能を使っている場合、議事録をプロジェクトに紐づけられます。プロジェクト詳細画面の「AIに質問」タブからは、そのプロジェクトに紐づいたタスク・議事録・添付ファイルを横断して質問できます。
「このプロジェクトの進捗状況は」「期限が近いタスクは」「最近の議事録で決まったことは」といった問いに、タスクと議事録の両方を見た上で答えが返ってきます。会議の記録と実行状況が別々の場所にある状態を、質問の側で統合するアプローチです。
議事録は「そのとき何が決まったか」の記録です。しかし組織に本当に必要なのは、その決定が積み重なってできた現在のルールのほうです。
半年前の議事録に「経費精算の締切を月末5営業日前に変更する」と書いてある。三か月前の別の議事録に「ただし出張費は例外とする」と書いてある。この二つを両方見つけて統合できる人は、社内にほとんどいません。
ここでナレッジ機能が効いてきます。
フォルダ階層で体系化する ナレッジはフォルダ構造のWiki形式です。「会社情報/就業規則」「業務マニュアル/営業部」のように、無制限にネストできる階層でドキュメントを整理します。議事録で決まったことのうち、継続的に参照されるものはナレッジ記事に落とし込む。フローの情報とストックの情報を分ける、という運用です。
Markdownエディタとバージョン管理 編集はツールバー付きのMarkdownエディタで行うため、記法の知識がなくても書けます。保存のたびに自動でバージョンが作成され(最大50世代)、いつ・誰が・何を変えたかを追跡でき、過去のバージョンへの復元も可能です。ルールが変わった経緯を追えることは、議事録との相性がとても良い性質です。
Wordインポート/ZIP一括インポート 既存の.docxファイルはMarkdownに自動変換してインポートできます。Markdownファイルを含むZIPを使えば、フォルダ構造ごと一括で取り込むことも可能です。NotionやConfluenceからエクスポートしたデータのメタデータをマッピングする機能もあるため、「移行が大変だから今のままでいい」という壁を下げられます。
マイAIのデータソースとして使う ナレッジのフォルダや記事は、マイAI(カスタムAIエージェント)の知識ベースとして設定できます。設定したフォルダの記事が更新されると、検索インデックスも自動で再構築されます。
つまり、「新人向けの業務ルール案内AI」のようなエージェントを作り、そのデータソースにナレッジの該当フォルダを指定しておけば、ルールが変わるたびにAIの回答も自動で追随する。マニュアルの更新とAIの更新を二重にやらなくて済む、というのがここでの実利です。

「全部検索できる」ことは、必ずしも良いことではありません。人事の議論も、取引条件も、全員が引ける状態は困ります。
CooBaseでは検索の便利さと情報統制を両立させるために、記録の段階で範囲を決めます。
議事録の公開範囲は三段階です。
| 公開範囲 | 閲覧できる人 | 想定用途 |
|---|---|---|
| 個人 | 作成者本人のみ | 個人メモ、下書き |
| グループ | 指定したグループのメンバー | 部署・チームの定例 |
| 全体 | 全ユーザー | 全社会議、方針共有 |
AI検索も、この公開範囲を必ず尊重します。閲覧権限のない議事録は検索結果にも回答にも現れません。「検索したら見えてはいけないものが出てきた」が起きない設計です。
ナレッジ側はフォルダ単位で閲覧権限・編集権限を設定でき、対象はユーザー・グループ・ロールのいずれでも指定できます。権限はGoogle ドライブと同じ考え方で親フォルダから子へ継承され、子で追加した権限は親との和集合になります。
具体的な運用の形を、週次の部署定例を例に描いてみます。
会議中 担当者が音声入力でメモを取る。発言を追いかけてタイピングする必要がないので、議論に参加できる。
会議直後(5分) AI清書で文章を整える。決定事項とアクションアイテム(担当者・期限つき)を入力する。タグを付けて、公開範囲を「グループ」にして保存。AIサマリーは自動で生成される。
翌週以降 メンバーが「先週の定例で自分に振られたタスクは?」と質問すれば、アクションアイテムが返ってくる。マネージャーが「この案件、過去にどんな懸念が出ていた?」と聞けば、複数回の定例をまたいで関連箇所が集まる。
四半期ごと 定例で決まったルールのうち定着したものを、ナレッジ記事に転記する。以降、新メンバーはナレッジを見れば現行ルールが分かる。議事録は「なぜそう決まったか」の経緯として残る。
この流れの中で、誰も議事録を通読していないという点が重要です。読まれることを前提にしていないから、読まれなくても機能します。

議事録が読まれないのは、書き手の努力不足ではありません。年間約320時間という投資に対して、取り出す仕組みが用意されていないことが原因です。
CooBaseのアプローチは、この三つに順に手を当てます。音声入力とAI清書で作る負担を下げ、RAG検索で読まずに引き出せるようにし、ナレッジ連携で組織の記憶として定着させる。
「議事録を書いても誰も読まない」の解決策は、読ませることではありません。読まなくても答えが返ってくる状態をつくることです。