「最近どう?」「特に問題ないです」「そっか、じゃあ頑張って」。
30分の枠を取ったはずの1on1が、5分で沈黙になる。何を聞けばいいか分からず、結局は業務の進捗確認になる。部下は「聞かれたから答えた」だけで、本当に困っていることは口にしない。そして翌月、また同じ会話が繰り返される。
1on1を導入している企業は増え続けています。それなのに「効果が感じられない」という声が上司からも部下からも上がっている。この記事では、国内3つの調査から1on1がうまくいかない構造を整理し、「準備」と「記録」という視点で1on1を立て直す方法を、CooBaseの機能とあわせて解説します。

パーソル総合研究所が2024年6月に実施した「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(上司1,500名・部下1,500名)によると、直近半年で1on1を経験した部下の割合は55.7%。一方で、実施頻度の平均はひと月あたり0.8回にとどまっていました。
注目したいのは、実施方針による頻度の差です。部下が上司に提案して実施している場合は月2.8回、上司が部下に提案した場合は月1.8回なのに対し、会社の方針・義務として実施している場合は月0.5回。「やらされている1on1」は、回数からして続いていないのです。
同じ調査で、1on1に関して困っていることを尋ねた結果が以下です。
上司と部下で順位は違えど、上位3項目はまったく同じです。つまり1on1がうまくいかないのは、どちらか一方のやる気の問題ではなく、両者が「手探り」のまま向き合わされている構造の問題だということが分かります。
企業側の視点でも同じ傾向が見えます。リクルートマネジメントソリューションズが2022年1月に人事担当者936名を対象に実施した「1on1ミーティング導入の実態調査」では、1on1を施策として導入している企業は全体で約7割。しかし導入後の課題として「上司の面談スキルの不足」が47.2%、「上司負荷の高まり」が44.6%、「1on1実施率の低下と形骸化」が33.1%と続きました。
同調査の担当研究員は、面談スキルが不足していると1on1は「雑談のみ」か「上司が進捗確認と指示をするだけの場」になりがちだと指摘しています。冒頭の「最近どう?」で始まって進捗確認で終わる1on1は、まさにこの典型です。

もうひとつ、見過ごされがちなデータがあります。
MENTAGRAPH株式会社が2025年6〜7月にビジネスパーソン724名(管理職300名・非管理職424名)を対象に行った調査では、1on1で「すべて率直に話せている」と答えた部下は11.3%、「重要なことはほぼ話せている」が33.0%で、合計しても半数に届きません。
そして「率直に話せない理由」の1位は、信頼関係でも評価への不安でもなく、「何を話してよいかわからない」(38.1%)でした。
さらに興味深いのが、上司と部下の「話したいこと」のズレです。上司側は「現在の業務の進行状況」40.7%、「業務プロセスや手順の相談」40.0%、「目標達成度やKPIの確認」39.3%と業務運用のテーマが上位を占めるのに対し、部下側では「キャリアパスや将来の方向性」が3位(29.5%)、「ワークライフバランス」が5位(27.6%)に入ります。上司の側でワークライフバランスは10位です。
上司は進捗を確認したい。部下は自分の将来や働き方を話したい。この関心のズレがある限り、部下の側から「話したいこと」が出てこないのは当然とも言えます。
パーソル総合研究所の調査でも、話す割合の認識ギャップが確認されています。上司は「部下の方が多く話している」と感じている割合が42.5%なのに対し、部下側では「上司の方が多く話している」が36.6%。同じ面談を経験しているのに、上司の側だけが「部下に話させている」と思っている構図です。

3つの調査を重ねると、1on1が「近況報告」で終わってしまう原因は、大きく3つに整理できます。
「面談前に何を準備すればよいかわからない」が部下の4人に1人。上司側も「面談スキルの不足」が最大の課題です。しかし本当の問題はスキルというより、面談の前に「この人の最近の状態」を把握する材料が手元にないことです。前回の1on1から1か月、その間に部下が何に取り組み、どこでつまずき、気分がどう推移したかを、上司は覚えていません。だから「最近どう?」から入るしかなくなります。
材料がないと、上司は自分が把握しやすい「業務の進捗」を聞きます。部下はそれに答えます。部下が本当に話したいキャリアや働き方の話は、切り出すきっかけがないまま終わります。「何を話してよいかわからない」38.1%の背景には、部下側にも「話していい」と思える入口がないことがあります。
上司の困りごと5位「以前の助言が部下の行動に反映されていない」25.7%。部下の困りごと5位「上司からの助言をどう行動に移せばよいかわからない」20.8%。ここでも両者が同じことで困っています。話した内容がどこにも残らず、次回の1on1で振り返られず、日常業務にも接続されない。「話しても何も変わらない」という実感が積み重なると、部下は本音を話す意味を見失います。
CooBaseは、日報を起点に部下の状態を継続的に見える化するワークフォースマネジメント基盤です。1on1に関しては、面談の「前」と「後」を支える機能を中心に設計されています。ここでは3つの原因に対応させて紹介します。

CooBaseのスタッフ分析画面(メンバー個人ページ)には、1on1の準備に必要な情報が1画面に集まっています。
1on1の前にこの画面を開き、アラートを確認し、AIサマリーで全体像を掴み、提案されたトピックをメモする。これだけで「最近どう?」から始める必要がなくなります。CooBaseの導入ガイドでは、この準備に必要な時間を含めて「マネージャーがダッシュボードを開くのは1日20分」を設計の中核に置いています。
上司側の準備だけでは、話題の主導権は上司のままです。CooBaseでは、部下の側にも日常的に「話したいことを置いておける場所」があります。



パーソル総合研究所の調査では、1on1のテーマを部下が設定している場合の成長度は6.9点、上司が設定している場合は6.4点(10点満点)と、部下主導の方が高い結果が出ています。相談エリアや感情記録は、部下が自分でテーマを持ち込むための入口として機能します。
CooBaseには、マネジメントメニューの中に「1on1」の記録機能があります。面談の記録を作成し、一覧と個別詳細で振り返ることができ、マネージャー向けダッシュボードでは「1on1トラッキング」として直近の実施状況を確認できます。「誰と、いつ、最後に話したか」がダッシュボードに出るだけで、「気づいたら3か月やっていなかった」という形骸化を防げます。

あわせて、スタッフ分析画面の「対応記録」機能では、リスクのあるスタッフに対して取った行動を「1on1面談」「業務量調整」「研修・サポート」「経過観察」の4種類から選んで記録できます。1on1で「業務量を調整する」と決めたなら、対応記録に残し、次回の1on1で「あれから残業は減った?」と確認する。助言や約束が行動につながったかを、記憶ではなく記録で追えるようになります。
さらに、1on1で「〇〇のスキルを伸ばそう」と話したなら、評価タイムラインや5次元スコアの推移で次回までの変化を確認できます。「話したことが次につながる」実感を上司と部下の両方が持てることが、本音を話す動機になります。

CooBaseの有無にかかわらず使える考え方として、1on1の前に確認する順番を提案します。
パーソル総合研究所の調査では、最も部下の成長度が高かった1on1は「月2〜3回以上」かつ「1回30分以上1時間未満」の組み合わせ(7.4点)でした。逆に、高頻度でも1回が1時間以上になると6.0点まで下がります。長くやればいいわけではなく、準備された30分を、間隔を空けずに繰り返すことが効果につながります。
日報の感情スコアや相談内容を1on1に活用する際、必ず押さえておきたい前提があります。
CooBaseでは、感情スコアは人事評価には使用しない設計になっています。また、相談エリアや気分の記録は、マネージャーが「見えている」ことを部下本人に事前に説明しておくことが導入時に推奨されています。見られていることを知らずに書いた本音を、上司が突然1on1で持ち出せば、それは信頼ではなく監視として受け取られます。
MENTAGRAPH社の調査で、部下が率直に話せない理由の3位は「人事評価に影響する可能性がある」27.1%、4位は「話した内容が他の人に伝わる可能性がある」24.6%でした。データを持っていることと、それをどう使うかを部下に説明していることは、セットでなければ逆効果になります。
上司も部下も、1on1について困っていることは同じでした。「効果が感じられない」「学ぶ仕組みがない」「準備が分からない」「話したことが行動に反映されない」。これらはすべて、面談の30分の外側にある問題です。
CooBaseは、日報を起点にした状態の見える化、AIによる1on1トピックの提案、相談エリアと感情記録、1on1記録と対応記録の機能によって、この「前後」を支えます。1on1のスキルを一朝一夕で身につけるのは難しくても、準備と記録の仕組みは今日から変えられます。
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